あなたもまた狙われていますよ(No.1)
 
木村秀美(安全対策担当理事)
最近世界各地で日本人が犯罪の被害を蒙ることが非常に多くなって参りました。
 
私は1960年(昭和35年)学校を出てからこれまでの約40年間に30を超える世界の国々を仕事で或いは遊びで訪れました。その間には実際に自分が被害にあったことや自分の周囲の日本人が数多くの被害にあっています。今年5月以降日本人会の安全対策の担当理事をやっていますが、この機会に多少自分では躊躇するところもありますが、これらの苦い経験をここで数回に分けてお披露目して皆様の安全対策のご参考にしていただければと思います。
 
事件1 パスポートの提示を求めたのは「偽警官」でした。
 
これは数年前のイタリーのローマ市内での出来事でした。イタリーでの仕事を終えてマレーシアへ戻って来る当日(日曜日)の朝、出発時間に余裕があったので同僚の一人とホテルをチェック・アウトして、荷物はホテルに預けてタクシーで市内観光に向かいました。日曜日の朝で人出は割合少なかった。ホテルで手に入れた観光案内書を唯一の手がかりに目指す博物館を探しましたがなかなか見付かりません。その内に私ども二人は表通りをちっと外れた裏通りに入って歩いていました。そこで突然黒塗りの高級外車(日本製ではないという意味)が私どもに横付けして、中から毛皮のジャンバーを着た20代後半の若者が出て来て(お前達は日本人か)と質問された。「そうだが何か問題でも?」と返事をするとその若者は表に丸の中にPが入った(日本のある製薬会社のロゴによく似た)黒い手帳を見せながら(彼は警察手帳のつもりか?)「ポリス、パスポート」と繰り返した。「パスポートはホテルに置いてある」「それなら連行する。この車に乗れ」と命令されたので、その前に彼等(車の中にはもう一人の人間がいた)の身分をチェックしたいと思い、その手帳をよく見せてくれ言って私は手を出したが、彼は私の手を叩いて見せてはくれな かった。
 
これはおかしいと思い、彼は何度となく我々に車に乗るように要求したが、私はこれまでの経験から本能的に「やばい」と判断して「これから一度ホテルに帰ってパスポートを持って警察に行く」と話して、彼も最終的に了解した(?)ので、我々は元来た表通りへと引き返した。その時本当は我々のパスポートはポケットの中に入っていたの。(外国では通常は身分を証明するパスポート―それも原本―を持っていないと身分証不携帯で逮捕されることもある。)その時初めて気が付いたのだが、我々は表通りから随分外れたところに来ていた。我々が表通りに出る前に彼等が再度現れて「おまえ達はどこへ行くのか?ホテルへ帰るのではないのか?」と詰問されたので「そうだ。そのために表通りでタクシーを探すのだ。」季節は3月初めであったため寒くて私はコートを着て日本人独特の格好で(両手をポケットに入れたまま)歩いていた。例の警官(?)は先ず私に両手をポケットから出すように命令したが、何かの弾みで私の右手が左の内ポケットに行った途端彼はあわって数歩飛び下がった。ピストルを出すのかと疑われたのかも知れない。彼は私が「かも」にならないと判断したのかその場を離れた。それでも私は又現れたら面倒だと判断して、教会の中ならやつらも悪いことはしないだろうと考えて、それから約1時間教会の中で時間を潰した。結果として目指した博物館も市内観光も出来ずに無念さ一杯でホテル経由でローマを離れた。肌寒い早春のローマでの一日でした。
 
≪ 教訓 1. パスポートは原則常時携帯すること。但し、むやみに知らない人には見
    せたり渡したりしないこと。
2. 見知らぬ外国人と話をする時は、寒くても両手をポケットの外に出してお
    くこと。
3. 警官(或いはそれらしき)といえども先ずは相手の身分証明証の提示を
    求めること。
4. 見知らぬ人の車には絶対乗らないこと。 ≫ 
             
(日本人会だより2000年11月号より抜粋)