それは今からだいぶ以前私がフィリッピンに駐在していた時首都マニラでの普通ではまったく考えられない悲惨な出来事でした。
皆さんはホテルやビルの中でエレベーターを利用する場合、ドアーが開いた時まずそこにケージ(エレベーターの箱)があるのを確認して中に入られますか?私はこの事件のあとはエレベーターに乗るときはそこにケージがあることを必ず確認するようになりました。
マニラを訪れたことがある人ならご存知の通り、「マニラ湾に沈む夕日-水平線に沈む大きくて真っ赤な太陽を一度は見る価値があります」を見るために人々が夕方に散策するマニラ湾に並行して走っている広い道路(ロハスブルーバード)がありますが、この道路に沿って大きくて豪華な事務所ビルやホテルなどが建っています。その一つにアジア開発銀行(ADB)のビルがあります。
出来事(事故)はこの超近代的なビル内で発生しました。ADBではアジア各国から派遣された人が働いています。もちろん日本からも派遣されています。ADBの総裁は確か日本人です。
ある国から派遣されてきていた同行の職員が他の階に行くために、書類に目を通しながらエレベーターホールのところへ歩いて来て、ボタンを押しました。エレベーターのドアーが開いたので、彼は何の疑いも持たずに中へ入りました。でもでも・・・なんということでしよう、そこにはエレベーターのケージが無かったのです。彼はそのまま下まで落下して死亡しました。
フィリッピンだけでなくほかの国でも経験しましたが、エレベーターのドアーが開いても、時にはケージがそこに来ていてもホールの床と平行になっていないで、エレベーター箱の床が高かったりあるいは低かったりしてびっくりしたことが多々ありました。
そのような中で、ヨーロッパを旅行しますと、都会でもまだエレベーターの中にはオペレーター(大抵の場合、いかつい体格で、前近代的服装に身を包んだおじいさんが多い)がいて、手動でドアーを開け閉めしてくれるホテルやビルを見かけます。おじいさんオペレーターが乗客の出入りを確認して重いドアーを手で開け閉めしてくれるとほっとします。
世の中すべての機械が自動化されつつあります。現在製造されているエレベーターはコンピューター化されたシステムで動かされてはいます。でもそれは人間と同じ頭脳を持っていない、あくまでも機械です。当地でも会社や商店で計算ミスを指摘すると「これはコンピューターが計算したのだから絶対正しい」との返事がかえってくるとよく耳にします。前述の経験からコンピューター化されたエレベーターといえども、それは心を持たない単なる鉄板であると言うことを常に頭に入れて私は生活するようになりました。
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